はじめに
私たちは1日の大半を室内で過ごしていますが、実は屋内の空気は思っている以上に汚れていることがあります。そこで重要になるのが「換気」です。この記事では、換気の目的と室内空気の汚染物質、そしてシックハウス対策についてわかりやすく解説します。
換気の目的とは?
換気とは、室内の空気を新鮮な外気と入れ替えることを指します。主な目的は以下の3つです。
- 汚染物質の除去:建材や家具から発生する化学物質、ほこり、カビ、ウイルス、二酸化炭素(CO₂)などの排出。
- 快適な湿度と温度の維持:適度な湿度を保ち、カビや結露の発生を防ぐ。
- においの低減:調理やタバコ、ペットのにおいなどを室外へ排出。
換気を怠ると、室内の空気が汚れ、健康への悪影響を引き起こす可能性があります。
室内空気を汚染する主な物質
室内の空気には、さまざまな汚染物質が含まれています。特に問題となるのが以下の物質です。
- ホルムアルデヒド(建材や家具の接着剤に含まれる)
- VOC(揮発性有機化合物)(塗料や洗剤から発生)
- 二酸化炭素(CO₂)(人の呼吸や燃焼によって増加)
- カビやダニ(高湿度環境で繁殖)
- 浮遊粉塵(SPM)(工場・事業場、自動車の走行、風の舞い上がりにより発生)
- PM2.5(外気や調理時の煙に含まれる微細な粒子)
浮遊粉塵は、環境基準の設定されている粒径10μm以下の浮遊粒子状物質(SPM)とそれ以外に区別されます。近年では2.5μm以下のものをPM2.5として基準が設定されるようになりました。
これらの物質が室内に蓄積すると、頭痛やめまい、倦怠感を引き起こし、「シックハウス症候群」と呼ばれる健康被害につながることがあります。
厚生労働省の定めた建築物の環境衛生管理基準から抜粋した基準値は下記です。二酸化炭素は4%を超えると人体に悪影響を及ぼし、より危険な一酸化炭素は1%を超えると数分間で命の危機に陥ります。
物質名 | 基準値 |
---|---|
二酸化炭素(CO₂) | 1,000ppm以下(=0.1%以下) |
一酸化炭素(CO) | 6ppm以下(=0.0006%以下) |
浮遊粉塵(SPM) | 0.15mg/m3以下 |
ホルムアルデヒド | 0.1mg/m3以下(=0.08 ppm以下) |
シックハウス対策と換気の重要性
シックハウス症候群は、建材や家具(合板や壁紙、接着剤等)に含まれる化学物質が原因で起こる健康障害です。省エネルギー化に向けて住宅の高気密・高断熱化が進み、室内に化学物質が充満することで発生するようになりました。
シックハウス症候群の原因は化学物質だけではなく、ダニや真菌などの生物学的要因、湿度、心理社会要因、個人の感受性など、様々な要因が複雑に関係していると考えられています。また、体内に化学物質が蓄積されると、低濃度でも反応する化学物質過敏症になることもあります。
そこで、厚労省はシックハウス対策としてホルムアルデヒドの使用規制を導入しました。JIS(日本農林規格)及びJAS(日本産業規格)におけるホルムアルデヒド放散量による等級区分の表示記号を定められ、ホルムアルデヒドの放散量の少ないものからF☆☆☆☆からF☆のランク分けされています。
放散量の少ないF☆☆☆☆は建築の内装仕上げに制限がなく、F☆☆☆やF☆☆は使用面積に制限があり、F☆(合板)は使用禁止となっています。
シックハウス症候群を防ぐためには、以下の換気対策を実践しましょう。
こまめに窓を開ける
- 1時間に1回、5〜10分ほど窓を開ける。
- 2カ所以上の窓を開けて空気の流れを作る。
24時間換気システムを活用
- 近年の住宅は気密性が高いため、機械換気(第1種・第3種換気)を使用する。
- フィルターを定期的に掃除し、効率を維持する。
家具・建材の選び方に注意
- F★★★★(フォースター)の建材を選ぶ(ホルムアルデヒドの発散が少ない)。
- 新しく家具を購入したら、しばらく換気をして臭いを飛ばす。
- タイガーハイクリンボードのようなホルムアルデヒドを短時間で吸収分解する建材を導入する。
湿度管理と空気清浄機の活用
- 湿度を40〜60%に保つことでカビ・ダニの発生を防ぐ。
- 揮発性有機化合物(VOC)を除去できる空気清浄機を使用する。
まとめ
換気は、室内の空気を清潔に保ち、健康を守るために欠かせません。日常的に換気を意識し、シックハウス対策をしっかり行うことで、快適で安全な住環境を作ることができます。
「最近、家の中の空気がこもっている気がする…」と思ったら、まずは窓を開けて新鮮な空気を取り入れてみましょう!